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東京高等裁判所 昭和33年(ラ)226号 決定 1958年7月09日

事実

抗告人は抗告理由として、本件根抵当権設定登記申請書の「登記原因及び其日附」欄には、単に「昭和二十八年十一月十日根抵当権設定契約」と記載されているに過ぎないが、本件の場合は根抵当権設定契約書は初から作成されず従つて右登記申請書には登記原因を証する書面として右契約書を添附しなかつたものであるから、右のように登記申請書に契約書が添附されない場合において登記原因を単に「根抵当権設定契約と記載するだけでは、登記原因の記載として無意味であつてこれを有効なものということはできない。従つて申請書による申請に基く本件根抵当権設定登記は登記原因の記載を欠く無効の登記であるから、右根抵当権設定登記に基いてなされた相手方の競売申立は違法であり、従つて原審のなした競落許可決定は取り消されるべきものであると主張した。

理由

記録添附の本件根抵当権設定登記申請書副本及び登記簿謄本の記載によると、本件根抵当設定登記申請書には登記原因を証する書面が初から存在しないものとして根抵当権設定契約書が添附されなかつたことは所論のとおりであるが、右申請書には、抗告人主張の「登記原因及び其日附」欄の記載のほかに、「債権限度額二百五十万円、契約期間昭和三十三年十一月三日まで」と記載されてあり、そしてこれらの点は何れも登記簿にも記載されているものであることが明らかである。これによると、本件根抵当権設定登記申請及びその登記は、昭和二十八年十一月十日、債権限度額二百五十万円、契約期間契約成立の日から昭和三十三年十一月三日までと定めて目的物件に設定された根抵当権設定契約を登記原因としてなされたものであることが明らかである。もともと根抵当権のような担保権設定登記の登記原因は、被担保債権を特定せしめるためにその発生原因を記載するものであるから、それが根抵当権設定契約である場合においては、被担保債権の限度額を特定し、目的物件に根抵当権を設定する趣旨が明らかにされていれば足りるものといわなければならない。

従つて本件根抵当権設定登記は、その登記原因の記載に欠けるところがなく、その有効なものであることはいうまでもないとして、本件抗告はこれを棄却した。

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